秋もいよいよ深まり、本との良い出遭いは、世界が広がりますね!

<静かなる旅人> ファビエンヌ・ヴェルディエ作  野口 園子訳 青山社2010年発行

ファビエンヌ・ヴェルディエは、フランスの女性アーティスト(世界的画家で現在活躍中)
この本は、1983年から1993年までの、10年間の彼女の波瀾万丈の中国(重慶)留学滞在記です。このアーティストの表情は、飾り気なく、媚びなく、ひたすら迫力を感じました。ファビエンヌは、
フランスの美大を卒業後、<激しい意識改革>に駆られ、憧れの中国に留学するわけです。
単身ですから、初日の入国からトラブル続きで、入国が、48時間も遅れた上に、身の危険にも
さらされるのですが、なんとか突破します。

冒頭、ファビエンヌは、読者に問いかけます。人生とは、宿命や運命と言われるような、個人の
意志の及ばない未知の力によって絶えず変形させられていくものではないだろうか。
ここで語ろうとしているのは、私という一人の画家のたどった人生の道のり、そして今日、
私の作品が生まれるにいたったいきさつである。

軽井沢 雲場池の秋日和

軽井沢 雲場池の秋日和

内容については、本人の生い立ち、家庭環境(両親との関係)、中国の学生寮の実態、劣悪な、
トイレ事情。他に中国で出遭った人々との心温まる交流。(お掃除のおばあちゃん、大学長、先生
との師弟関係、ETC,,,)そして学んだ多くの教え等。また文化大革命、天安門事件等の生き証人
の話、先生と出かけた大小の名園、お寺の旅など多岐にわたってます。
以上の中で、私が特に印象に残っているページのいくつかを抜粋して紹介します。

<父親との修行> ファビエンヌ

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軽井沢 雲場池

父親との画学生の修行は、何ヶ月も続いた。常に自分で考えて理解し、ときに反発しながら
技術を磨いていくほかなかった。たまに褒めてもらえることもあったが、たいていは、自分の
無知に落胆し、無能さに怒りを覚えることの連続だった。
その中で、私が確実に得たものは、<謙虚な生き方>だった。

<知識を持ちすぎると、想像力が死んでしまう> 黄(ホワン)先生の言葉

それは、さまざまな知識を手当たり次第に詰め込んだ結果なのだ。あなたは、技術を習得し
それを超越することに集中しなさい。絵を描くということは、労をもってまた書物からの空虚
な知識をもってすることではない。内から自然に起こってくる筆さばきによって紙の上に生命
の足跡を残すことなのだ。

<始めて、重慶の通りの軒先の暮らしを垣間見たー九龍坂(シウロンポー)の茶館
ファビエンヌ
迷路のあちこちで人々の生活の匂いが、ただよう光景と遭遇するたびにほっとさせられる
思いだ。どんなに全体主義に管理された社会であっても人間の自然の営みは、存在続けて
いるのを確かめることができた。
兵舎のような大学キャンパスから逃れ、つかの間の休息と幸福感を味わえた茶館文化が
あった。
<茶館文化>
中国では、庶民が権力をおおっぴらに批判することは、できなかった。
しかし古代の歴史や伝説上の人物に託して、ときの権力者に対する抗議、不平不満のはけ口
とすることはできたし、それはいつの時代であっても、いかなる権力形態であろうとも共通して
言えることであった。
それは、民衆のはかない抵抗の一端にすぎなかった。

<黄(ホアン)先生の言葉>

”大昔から、<芸術家は飢え死にするものだ>と相場は決まっている。画家は、人生をかけて
する職業だ。家族生活や情愛などは、精神を混乱させる種にしかならん!”

とまあ盛りだくさんの中からの一部分です。この本は、学術書みたいに堅くもなく、哲学的な
部分もあるのですが、大変解りやすく、そして格調が高いと思います。翻訳者の方の力量も
素晴らしいと思います。心の平安を保つための瞑想の仕方にも触れてます。

そして何よりも、ファビエンヌの目標に向かって挑む、不屈の精神こそ受け取るべきメッセージ
かと確信します。

軽井沢 雲場池

軽井沢 雲場池

 

以上で今回の読み応えのあった本の紹介を終わります。最後まで、読んでいただきまして、有難うございました。私も、ファビエンヌの強さに学んで、生きていかねばと想いを新たにしてます。

では、また次回をお楽しみに!

REMIN

 

 

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秋もいよいよ深まり、本との良い出遭いは、世界が広がりますね! への2件のフィードバック

  1. スノー・ベリー のコメント:

    REMINさんはartistだからこの本の著者に共鳴するところが多かったのだと思います。あなたの記事を読んで、しばらく前に見た映画を紹介したいと思いました。もう見ているかも知れませんが。ますますArtの方、頑張って下さい。私は今歌とギターに情熱をかけています。

    『セラフィーヌの庭』
    20世紀初頭に実在した素朴派の画家セラフィーヌ・ルイと彼女を見いだした著名な画商ヴィルヘルム・ウーデの出会いと生涯にわたる交流を描く。
    修道院で育ち、貧しい家政婦として生計を立てながら、天使の声を聞き、花や木々と語りつつ独自の絵画世界を守り続けたセラフィーヌ。

  2. REMIN のコメント:

    スノーベリーさん
    始めまして。早速のご感想を、大変有難うございました。
    ご紹介の<セラフィーヌの庭>は、2年前位に、觀ました。
    絵も素晴らしく、映画のストリーにも感動したのを、覚えて
    ますが、もう一度觀てみます。

    スノーベリーさんは、歌とギターに頑張っておられるのですね!
    いいですね!いつか聴かせて下さいね!

    REMIN

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