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14年03月25日

最近のできごと

M (アメリカ在住)

私とパートナーの関係は今年で29年目になる。昨年最高裁が同姓婚を認めたので、長年思いもしなかった“結婚”をした。特に結婚に憧れていた訳ではなく、既婚者に与えられる法的経済的利益が結婚に踏みきった主な原因である。

 

お互いの関係が馴れ合いにならないようにする為に、月に一度、二人でデートをすることにした。パートナーのマーディが前癌症状と診断された為、私達はビーガン(Vegan。ベジタリアンはチーズ、バター、卵、魚を食べる人もいるが、ビーガンは動物性食品は一切食べない)になった。私はたまに破っているが、マーディは前癌症状を治す為に、とても厳格な食事療法をしている。一週間前の土曜の夜は私達のデートの日で、有機の食材だけを使うビーガンのレストランに行った。その後有機食品を主に売っている自然食品店に行った。そこでのちょっとしたハップニングを書こうと思う。

 

土曜日の夜なので人が少なくて、いつもの買い物の時間帯と違って店にはリラックスした雰囲気があった。マーディは公の場所に行くと、家ではほとんど使わないのに急に日本語を話す癖がある。廻りの人は私達が話していることが分らないという利点から、そこにいる人達のコメントをしたり(あの人チョット変な人ね!!はよく出る言葉)、人に聞かれたくないプライベートの話しや、英語だったら人前でとても言えないようなことを日本語で平気な顔をして言って、二人で笑ったりする。ごく最近の例では、Labor Chorus Group(労働者の権利などを主眼としたコーラス・グループ)という政治的なグループの資金集めのsing along(共に歌う)イベントに行った時のこと。他の歌のイベント(私は歌うことが好きである)で顔見知りのユダヤ人で身体の大きい髭もじゃの男性を見かけた。“あの音痴な人がまた来ている”とマーディに言い、日本語を使って楽しんでいる。廻りに日本語が分る人もたまにはいるから、あまり変なことを言わないようにと、私は時折彼女をたしなめたりする。同性カップルが堂々と認められる場所では彼女は私に対してaffectionate(身体で愛情を示す)になったりする。

 

デートをしているという、少し浮かれた気持ちからか、廻りに誰もいないという気楽さからか、突然マーディが私の背後で “可愛いわねーー!!”と言った。私は英語で、“後ろからしか私を見ていないのに何言ってるのよーー!!”というようなことを言いながら、彼女の方に一瞬振り返った。その時そこにアジア人の女性の驚いた顔を見た。目が大きく見開かれ、顎が下がって口が半開きになっていた。マーディもその瞬間の女性の顔を見た。マーディは一般の人より自分の周囲に何が起こっているかにとても敏感な性質で、その時、誰か日本語が分る人がそこにいて、自分の言ったことを聞いたと直感した。即振り返ったら、そこに日本人女性の驚きの顔があった。

 

何故この人はこんなに驚いたのだろうか、普通日本人は何かに驚いても顔や態度にあまり出さないのにと、その後マーディとの会話にその時のことが何度も出てきて笑い合った。同性結婚も認められていて、メディアにもゲイ・レズビアンのことが日常的に取り上げられる、アメリカの中でも進歩的な州のシアトルである。あの女性は日本から来たばかりの学生なのだろうか? 厳格なクリスチャンなのだろうか? 彼女の立場になって考えてみると、すぐ側にいた白髪の小太りでヨタヨタ歩きの白人のおばさんが、これもごま塩交じりのアジア系のおばさんに、それも日本語で“可愛いわねーー!!”とにこにこしながら言っているのを聞いて、おったまげたのだろう。あれはホモフォビア(同性愛嫌悪)なんだろうと、私達はいろいろ憶測したが、実際はどうなんだろうか?

“最近のできごと” への1件のコメント

  1. ino より:

    すっごくめちゃくちゃ面白かったです。その場面に、その時間に引き込まれてしまいました。楽しかった。その場にいなくてもその場にいるような臨場感がありました。レズビアンの日常を語る作家になってくれとお願いしたいほどです。

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