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14年01月26日

「はなげばぁちゃん」は、スゴイ!

若林 苗子

普段はほとんど、絵本は見ない(読まない)のだけれど、最近「はなげばぁちゃん」(作・絵 山田真奈未 2009年 パロル舎)という絵本を見て、これはスゴイ!素敵だと思った。きっかけは「ふぇみん」というフェミ・ジャーナルの2014年1月1日号に「はなげばぁちゃん」の紹介と山田さんのインタビュー記事が出ていたこと。早速図書館で借りた。

 

この物語は、長~いはなげを持つばあちゃんと暮らしている猫の語り(大阪弁)によって進んでいくのだが、この大阪弁がとてもいい。「ぼくは猫。はなげばあちゃんとねずみと暮らしてんねん。」ばあちゃんのはなげはものすご~く長くて、いろんなもんをつかんではするするって戻ってくる、カメレオンの舌みたいな鼻毛だ。だからまわりはばあちゃんが通ると「不けつや」「品ないわ」と言って、見てみぬふりをする。

 

でもばあちゃんはまわりがどう思っているかは、全然気にしない。「右の鼻毛で川に落ちたボールを拾ってな、左の鼻毛で風に飛ばされた帽子をつかむなんて、居眠りしてたってできてしまう」「でもそこはホレ、はなげばあちゃん。返すふりして、もっと遠くに投げたんや。」『びっくりした顔を見るとな、胸がすーってすんねん』そう言うて、はなげばあちゃんは(ふぉっふぉふぉっ)と笑(わろ)た。

 

そう、ばあちゃんは決して「いい人」ではない。街に行ったら、自分の長~い鼻毛ブランコに乗って、街を見わたし、「ええもん」を見つける。他人の思惑を気にせず、マイペースで生きている。

 

他人の目なんかどこ吹く風、悪さばっかりするばあちゃん。そんなはなげばあちゃんが病気で寝込んでしまう。二、三日したら家のすぐ外でひそひそ声がする。同居している猫とねずみはいつものばあちゃんの行状から、街から出て行けと言われるのではと半べそをかく。「どたまにきた」ばあちゃんがドアを開けるとそこには、なんとお見舞いの品物が沢山おいてあったのだ。

 

ばあちゃんが悪さばっかりすることに皆が慣れてしまった。だから、反対に「ええことしたら、びっくりするんちゃう?」という猫のアドバイスを受け、ばあちゃん三日三晩鼻毛を編み続け、こっそり広場に持って行った。『これ、鼻毛で作ったハンモックちゃうやろか』とみんなは、ハンモックによじ登り、楽しそうな声を上げる。そんなみんなの様子を見て、ばあちゃんは大きく深呼吸をして、息を吐き出し、はしごを全部とっぱらう。「このあたしがええことなんかしたらな、地球滅亡やで」と言って。

 

「はなげ=鼻毛」って面倒だなって、ずーと思ってきた。外出する時には、鏡を見て、はなげが出ていないかをチェックする。髪の毛と違って、特に「はなげ」が出ているのは、身だしなみが良くないし、はなげはカッコいいものではないとされている。そんなわたしたちにしみついた価値観をこの絵本は根本からゆさぶってくれる。絵本のばあちゃんのお月さまみたいに丸い顔、真ん中にでんと存在している丸い鼻とそこから伸びる長~いはなげ、ものすごい存在感だ。みんなは見て見ぬふりをする。そうだよね。こんな長いはなげの人がいたらかなりびっくりするだろう。猫やねずみ、登場する動物たちや人間たちの絵も面白い。

 

「ふぇみん」のインタビューによると、作者の山田さんは、「排除することがすごくいや」、絵本を通して「女の子が当たり前に思っていることに、ちょっと疑問を持ってもらいたい」と語っている。「このあたしがええことなんかしたらな、地球滅亡やで」というばあちゃんの最後のセリフは奥が深い。「さすが、ばあちゃん!」とうなりました。

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